ホームページの基礎知識2020.09.24[木]
Webサービスにおける著作権を考える
インターネットの普及により、Webサービスを運営している企業は多くなっています。Webサービスを提供する企業が増えると、その秩序を守るためのルール、つまり法律が必要となってきます。
法律関係の話はやっかいだと、後回しにされる方も多いかもしれません。しかし、サービスの提供を始める際には、予想されるトラブルをあぶり出して、利用規約で事前に取り扱いを定めておく事が重要なポイントとなります。まずはトラブルを避けるために、どのような法律が関係してくるのかを知っておく必要があるのです。
今回は、Webサービスの提供する上で覚えておきたい著作権についての情報を紹介していきます。著作権にはどのような法律が関係しているのでしょうか?
著作権とは何か?
著作権とは、著作物を創作した著作者に与えられる権利のことです。この権利は著作権法という法律で定められています。著作権法は、著作権の内容を著作者人格権と著作財産権の2つに分けられます。
著作者人格権は、著作物に表現されている著作者の人格を保護する権利です。著作者人格権により、著作物の公表権や氏名表示権、同一性保持権(著作者の意思に反した著作物の変更、改変を禁止する)が守られます。この権利は、著作者だけが持つことのできる権利で、譲ることは出来ません。
著作財産権は、著作物を営利目的で利用する際に生じる権利です。著作物の利用方法によってさまざまな権利が決められています。例えば、複製権。著作権の中で最も基本的な権利といえます。複製権とは、著作者が著作物を複製することを認める権利のことです。この権利により、著作物が勝手に複製されないよう守られます。また、他にもさまざまな方法で著作物を公にする権利、頒布する権利、譲渡する権利、貸与する権利などがあり、これらの権利は著作物が無断で使用されてしまうことから守ります。この権利は、譲ることのできるものです。
権利のWebサービスへの影響
Webサービスにこれらの権利がどのように影響を与えるのでしょうか?
著作権はお金を払ったからといって得られるものではありません。譲渡契約を交わして初めて、著作権が渡されます。
例えば、ある企業が費用を払いWebサイト制作会社にホームページを制作してもらったとします。 このホームページが、依頼した企業に納品されたとしても、著作者人格権と著作財産権はWebサイト制作会社に属することになります。もし企業が自社でホームページをメンテナンスするとなると、それは著作権を侵害することになってしまうのです。こうしたトラブルを避けるため、権利の譲渡や利用許諾について、著作者人格権の不行使等の詳細を、発注の際に取り決める必要があるのです。
Webサービスに関する事例
それでは、実際に著作権が問題となった判例を見て行きたいと思います。
判例1:ホテルのクチコミ情報を運営会社が本に載せて出版しようとした
クチコミ投稿者が、クチコミを本に載せたことに対して「著作権の侵害」と訴えを起こしました。対して、本の著者と出版社はクチコミ投稿のクチコミは「匿名で行われた」点や、クチコミ情報として載せられた内容は「質問と答えからなるものであり、思想や感情を創作的に表現した著作物にあたらない」と主張しましたが、投稿者の権利が保護され、本は出版差し止めとなりました。
この判例から、ユーザーからの投稿を再編集して他メディアに載せたり書籍化する可能性がある場合、運営する側は利用規約でその取り扱いをあらかじめ明記しておく必要がある、という点を知ることができます。
判例2:ネット向けに配信した記事の見出しを無断使用された
2005年に読売新聞が、インターネットで配信した記事の見出し部分を、断りなく使用したネットニュース配信会社に対して、著作権法違反ということで使用差し止めと損害賠償を求めました。判決では、「見出しが独創性を必要とする著作物に当たらない」として、読売新聞側の訴えを退けました。しかし、「見出しは多大な労力を要する報道機関の活動の結果」として、ネットニュース配信会社の営利目的による無断の反復利用は不法行為であるとの判決がくだされ、損害賠償を命じられました。
この判例から、創作したものに著作物性が認められないとしても、法的保護が認められる事があるということが分かります。
どのように法律違反を防ぐか?
それでは、法律違反を防ぐために、サービスを運営する会社にはどういった対策が求められるのでしょうか?
まずは、何が著作物に該当するのかを知ることが必要です。利用しようとするものが著作物に該当しなければ、法律違反にはなりません。ポイントとなるのは、著作物に「創作者の思想又は感情」が伴っているか、創作者の個性が表れている「創作的」なもの、文章等で「表現された」ものであるかという点です。詳しくは著作権法で定義されています。
次に、他人の著作物を自社サイトに引用しようとする場合はどうでしょうか?
著作権法第三十二条「引用」という項目では、”公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならない”(著作権法)とあります。著作物が既に公表されたものであれば引用できる、とあります。ですから、引用しようとしているものが既に公表されたものであるべきです。
また、「公正な慣行に合致するもの」かつ「引用の目的上正当な範囲内」である必要があります。つまり、引用部分の方がオリジナルの記事の中で主要な内容になってしまうことの無いように、引用は部分的な位置であるべきということです。また、引用部分に「」をつけるなどして、引用部分を明確にすることや引用元を明記すること、またそのまま改変/編集をせずに引用する事も公正な慣行に合致する為に必要なことです。また、引用する際には引用する必然性(目的)があるという点も必要です。内容とは何の関係もない著作物を、ただ好きだからという理由などで引用してはいけないということです。
これらの条件を満たしている場合は、著作者の許可がなくても取り込む事ができるのです。
では、ユーザーによってコンテンツが投稿される形式のWebサービスを提供する場合はどうでしょうか? この場合は、利用規約で「コンテンツの権利の帰属」を明確に提示しておく必要があります。
事業者側からすると、ユーザーのほうから全ての権利を譲り渡してもらえると都合が良いのですが、先程の判例1にあったように、ユーザーから反発を受ける可能性を念頭においておきましょう。
ユーザーの視線で考えると、前もってユーザーから「サービスの継続的運営に必要とされる範囲で変更や利用の許諾を取る」のが適切でしょう。
まとめ
いかがでしたか?Webサービスを提供する際、「どのようにユーザーを集めるか?」「どのように売り上げを伸ばすか?」ということに気を取られてしまい、法律を疎かにしてしまいがちです。
しかし法律違反を犯してしまうと、サービスの停止や損害賠償等のペナルティーを課される可能性があり、会社の評判にも悪影響を与えかねません。そのため、あらかじめ著作権等の法律的な面について調べ、法律に関係するかもしれない事柄を把握しておきましょう。
正しい知識を持って新たなWebサービスを提供することができれば、企業にとってもそのサービスを必要とする人にとっても益のあるものとなるでしょう。
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